劇団、本谷有希子「腑抜けども、悲しみの愛をみせろ」(青山円形劇場)

夜、青山は「こどもの城」にお出かけ。
いえいえ、別にお子さまに混じって大のオッサンが一緒になって遊ぼうと言うわけではありません。
というか、その時間はとっくに閉館となっています。
そうではなく、同じフロアにある青山円形劇場で、劇団、本谷有希子の公演「腑抜けども、悲しみの愛をみせろ」を観に行ってきたのです。
劇団、本谷有希子「腑抜けども、悲しみの愛をみせろ」(青山円形劇場)

旗揚げ公演の再演ということでしたが、ぼくにとってはこれが初見の劇団。
どういった劇団なのか、その舞台内容はどのようなものか、と言った情報が一切ないままの状態で観に行ったのです。
が、始まってからすぐにそのストーリーが持つテンションの高さに、グイグイと引き込まれてしまいました。
ストーリーもさることながら、役者陣もすごいのです。
特に"お姉さん"役の方には、演技と判っていながらも、その「話し方」や「視線(目つき)」の凄まじさには、2時間サブイボが立ちまくりです。
終わってみると、ちょっと涙がこぼれそうになっていた自分にビックリですよ。
これはメチャクチャいいですよ、マジでマジで。
間違いなく、本年ナンバーワンの舞台公演であると言ってもいいでしょう。

ストーリーは、全面的に救いようのない暗さです。
徹底的に「これでもか」「これでもか」「これでもか」と、登場人物たちによって繰り出される悪意、悪意、悪意の数々。
もう若竹七海の小説でもかくやと思えるほど、ただひたすらに悪意が悪意を呼ぶ展開には、吐き気さえも覚えてしまいます。
しかし、さりげなくそこかしこに張られていたのが伏線の数々。

やがて、その張り巡らされていた伏線が、ラストのカタストロフィに向かって、ひとつずつキッチリと収束していくあたりはまさにミステリ的手法。
途中までは、まったく先が読めない展開であったのですが、このラストにおけるカタストロフィと、そこに至るまでの伏線の張り方にはまさに「お見事」としか言いようがありません。

ただしひとつ残念だったのは、ストーリー展開が登場人物である「家族内だけ」であったこと。
これが例えば、田舎のムラ独特の「閉塞された空間」「限られた人間関係」「守られなければならないオキテ」といった因習を押し出していれば、なぜお姉さんが妹に対して徹底的に悪意を持つようになったのか、またお兄さんが、妹となる彼女の言いなりにならざるを得なかったのか、その狂気的な理由も明らかになったと思うのです。
またそのムラの因習を押し出すことで、「なぜムラから逃れようとしていたのか」「(希望が打ち砕かれたときに)なぜ人格が崩壊するほど絶望してしまったのか」といった、あのラストの狂おしさももっと深くなったと思うのですね。

とはいうものの、こうしたチャチャは些細なものに思えるほど、今回のステージは「台本」「演出」「役者」ともに非常に完成されたものでありました。
劇団、本谷有希子。
今後も目を離すことができません。