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おフネさん、ご乱心

電車の中で、何やらワカメちゃんが引きつった笑いを浮かべて、ちょっと困っていました。

引きつり笑いのワカメちゃん。一体どうしたと言うのでしょう

一体、何が彼女の身の上に起こったと言うのでしょう。
よくよく観てみると、どうも一緒に話をしているフネさんが困ったことを言っているようなのです。

ワカメちゃんに将来設計を語りかけるフネ
ワカメ、将来、就職するんなら、日本郵船がいいんじゃないかい。

ワカメちゃんといえば確かまだ小学3年生。
このお年頃の女の子の将来の夢といえば、「お嫁さん」とか「お花屋さん」とか「パン屋さん」とか、そういった身近なものではなかったでしょうか。
なのにいきなり「就職」ですよ、「就職」。
いくら今が就職難の時代だからって、小学校3年生から就職を考えさせてどうするつもりなんでしょう。
しかも「日本郵船」なんて、えらく具体的に社名まで出しちゃっていますよ。
何を根拠におフネさんは、日本郵船なんて言い出したのでしょうか。
そしてワカメちゃんのこの引きつった笑い。
そしてどこか諦めに似た表情をも見ることができます。
きっとワカメちゃんは心の中で、「またお母さんの繰り言が始まったわ」とため息をついているのでしょう。
そうです、きっとフネさんは年がら年中、まだ小学生である自分の子供たちを捕まえては、「日本郵船に就職するのがいいんじゃない」などと言っているに違いないのです。

それが証拠に……ホラ!

カツオくんに将来設計を語りかけるフネ
カツオ、将来、就職するんなら、日本郵船がいいんじゃないかい。

まったくもって同じことを、今度はカツオにも言っています。
カツオだってまだ小学5年生。
そんな何十年も先の心配よりも、中島と遊ぶ約束に遅れそうなことの方が心配なはずです。
見てくださいよ、カツオくんだってメチャクチャ困りながらも、どこか「ああ、母さん。まただよ」といった諦めの表情が見てとれるのです。

しかし、どうしてフネさんはここまで自分たちの子どもに「日本郵船」などと具体的な社名まで出して、就職を勧めるのでしょう。
サザエさんと言えば「東芝」ですよ。
なのに日本郵船。
すると、エライ事実を発見してしまったのです。

日本郵船は実はフネがオーナーだったのです!
フネの会社です

オー! マイ! ガーッ!
なんとフネは「日本郵船」のオーナーだったらしいのです。女帝ですよ、女帝。
あの亭主関白を絵に書いたような波平にいつもニコニコ接しているあのおフネさんが……女帝。

きっと今のうちにワカメちゃんやカツオくんを会社に呼び入れ、一族で経営していこうと言う魂胆に他なりません。
恐るべし、おフネさん。

経営陣を一族郎党で固めると言えば、マスオなんて筆頭に引き入れられるのだろうな……と見てみると、ありゃりゃ。

姑としてのプレッシャーを、マスオさんにさりげなく与える鬼のようなフネ
マスオさん、いつかは、サザエを世界一周クルーズに連れていってやってくださいよ。

アカの他人であるマスオさんには、決して「今、転職するんなら、日本郵船がいいんじゃないかい」とは一言も言わないようです。
それどころか、オニですよ、オニ。
「いつかは連れて行ってやってくださいよ」という言葉の陰には、「フン、この能無し男の甲斐性なし」という罵りのニュアンスが含まれていることに気付かなければなりません。
ただし、決してそれを表に出さず、娘の名前を出して「嫁の母」という微妙な立場から、真綿で首を絞めるかのようにジワジワとプレッシャーを与えているわけですね。
さすがは女帝、やり方がうまい。
放送の中ではサザエさん一家と仲良く円満な家族関係を築いているように見えるマスオさんですが、一旦収録が終わると、きっとこのようにおフネさんからチクチクと苛められているに違いないのです。

そう思うと、苦笑しながら頭をかいているマスオの眼が、実は笑っていないことに気付きませんか……。
ひょっとすると、我々からは見えない左手の先には、バタフライナイフか、文化包丁か、あるいはナタか、日本刀か、牛刀か、スタンガンか、マシンガンか、手榴弾か、とにかく何らかの武器を持っていないとも限らないのです。
一家惨殺までもはやカウントダウンに入っているかもしれません。

そして、これが実の娘になるとどうかというと

フネよ、あなたは独裁者になりたいのか
サザエ、あたしがいるから、サザエがいるんだよ。
タンカーがあるから、石油も来るんだよ。

もはやサザエさんは、おフネさんの言うことなど聞く耳持ってません。
カメラ目線でニヤニヤ笑いっぱなしです。
そりゃそうです。
なぜか皿を拭きながら、いきなり「私がいるから、お前がいるんだ」などと恩を着せてくるのですから。
しかも、「タンカーがあるから、石油も来るんだ」などとワケの判らないことを口走り始めています。
これは非常に危ない兆候と言えるでしょう。
サザエさんもニヤニヤ笑っていないで、至急、対策を打っておいた方がいいのです。

しかしこのおフネさん、どうせだったらこの調子で街に飛び出して

  • サブちゃん、あなたが持ってきたお醤油も輸入大豆が原料なんですよ
  • 伊佐坂先生、紙の生産がストップしてもe-Novelがありますよ
  • アナゴさん、あなたのその大きなクチビルを何とかしてくださいよ
  • 花沢さん、あなたの家にはカツオを婿入りさせたりしませんよ

などと町内をわめきながら歩き散らす「どうした?! おフネさん?!」シリーズなんてつくってみてはいかがでしょう。
もちろん、言われた皆はやっぱり「ちょっと困った顔」をしながらも「ああ、まただよ、磯野さんちの大奥さん」と諦めも混じった表情で聞いているのですね。
その際には、おフネさんの髪の毛をちょっとボサボサにして鬼気迫る感じにしちゃえば、よりリアル。

「二人の女兵士の物語」(新国立劇場・小劇場)

ソワレは、下北沢からそのまま京王線に乗って初台へ移動です。
場所は新国立劇場。
といってもシェークスピアとかオペラとか、そんなんじゃありません。
小劇場ですよ、小劇場。
本来のステージから客席に向かってさらにステージを三角形に張り出し、その張り出されたステージを、両サイドの客席から見ると言う趣向の「ロフト」ステージ。
ちょうどこんな感じなんですね。
実験的なスタイルの「ロフト」ステージ

出演は、小島聖と宮島千栄の2名のみ。つまり2人芝居ですな。そのままですけど。
しかしながら、「役者はステージの両側から観客に観られている」という、通常の劇場ではあまりありえない実験的なスタイルに、いったいどのような作品をどのように演出してくるのか、もう考えるだけでワクワクドキドキのサスペンスフルな小劇場空間。
しかも、その作・演出は、今をときめく燐光群の坂手洋二なんですよ。
きっと社会的なメッセージ色の強いものを持ってくるのですよね、ね、ね。
だってタイトルが「二人の女兵士の物語」ですもん。

開演直後、いきなり来ましたよ。吹雪く冬山の屋外に、ロープで括られた一人の女兵士、そして彼女に“自己批判”と“総括”を迫る女兵士。
ここは60年代か、70年代か。全共闘か、中核派か、革マル派か、日本赤軍か。
そんな物語化と思いきや……ん?
なんと暗転するたびに物語は次々とめまぐるしく変わっていくのです。
てっきり、女兵士2名の争いごとを延々と描いた物語とかと勝手に思っていたのですが、さにあらず、オムニバス形式で、様々な状況下における女2名の争いを、時には荒々しく、時にはひっそりと水面下で描きあげる作品だったのでした。
しかしその緩急極めた展開に、観客はステージのの両脇でただ、ただ、圧倒されるだけ。
非常に濃密な内容に仕上がっていたのでした。

こうした「お行儀のいい」劇場で観た作品で、こんなに「メチャクチャ面白かった!」と感じたのは、ひょっとして初めてのことなのかもしれません。
ぜひともおススメ……って、もう終わってるやんけ!
「二人の女兵士の物語」(新国立劇場)

拙者ムニエル「不思議インザハウス」(本多劇場)

今日も今日でダブルヘッダー。
お金の無駄遣いと怒られちゃいますが、観たいお芝居が重なっているのが悪いということで、人のせいにしています。
卑怯な生き方です。でもラクな生き方なのです。悪いか。

そんな訳でまずは一発目。
マチネで、下北沢は本多劇場に拙者ムニエル「不思議インザハウス」を観に行きました。
拙者ムニエル「不思議インザハウス」(本多劇場)

下北沢といえば、まずはいつも行くうどん屋さんで空っ腹を満たしてからお芝居を観るのですが、なんと今日は起きると「うへえ、ヤバイ!」。
パジャマ姿のまま家を飛び出したくなるほどのお寝坊モード。
ご飯なんてゆっくり食べている時間なんてありゃしません。
そんなわけで仕方なく、下北沢駅前の松屋で牛めしなんぞかき込むだけであとはジッとガマンの子でありました。
でもそのおかげで、何とかセーフ、ギリギリ開演5分前に座席に到着したのです。

内容はというと、あははは、やはりそこは拙者ムニエル。
無駄とも思えるほど異様に高いテンションの主役に、そしてオゲレツとナンセンス。
健在です、健在。
また前回公演では長いだけでグダグダに思えたプロットも、今回はきちんと練られており、構成もかなりしっかりとしています。
何より、ラストのオチを迎えるまでの展開が非常にいいのです、いい!
ある意味、パラドックスものに通じるものがあるのですが、それでも思わず涙ぐんじゃいましたよ、恥ずかしながら。
前回公演では正直「これからも観続けたいと思えるかな......どうかな......」と悩んだものですが、今回のこのレベルが維持されるのであれば問題はありません!
そんな訳で、楽しみな次回公演は......おい。来年秋かよ。
まあそこはそれ、おいしいお菓子はあとに取っておくようなもの、お楽しみがまだ1年も先にとっておけるということで待たせていただきます。

本多劇場でで配布されていた他の劇団の公演告知チラシです。
「イキガイイ」とは「キチガイイッ!」と似ている
色々とこの劇団の誉め言葉を色々な人が書いてあったりするのですが、そのなかに「イキガイイ」と書かれてあったりします。
どうやら「活きがいい」と言いたかったと思うのですが、ぼくの場合、どうみてもヒステリックに

「キチガイイッ!」

と叫んでいるようにしか見えないのです。
いや、ただそれだけなので、「だからどうした」と訊かれても困るんですけど。

生まれて初めて、映画のエキストラに参加しました

そんな訳で、会社をサボって(と言っても有給をちゃんととって)、行ってきましたよ、映画のロケ。
会社に行くよりも早起きして、朝の8時半に現地入り。
しかし寒い。とにかく寒い。雨がシトシトと降るなか、着いたところは倉庫を改装したようなところ。
またこの中が寒いんです。腰痛持ちには耐えられません。
そんな底冷えする会場だというのに、撮影開始前から「はい、じゃあジャケットを脱いでください」との指示が出て、ひぇ~ブルブル。

撮影が始まる前に、まずは今日のシーンで出演する俳優たちのご紹介。
おお、アンナ人が。おお、コンナ人が。
テレビで観ていると非常に“微妙な人たち”なんですが、それでもミーハーなぼくは間近で見られたことで「ううーん、本物だー」とウキウキ、そしてジロジロ。

そうこうするうちに始まりましたよ、撮影が。
今回のエキストラの役どころは、とにかく声を出すこと。
朝一番から、しかも寒いところで、とにかく大声で叫び続けていたものだから、あっという間にノドが痛くなってしまいました。
昼休みに入るころには、もうすっかり声が枯れてしまいました。
大声で叫んでいると普通に声が出るのですが、通常のトーンに落とすとその声はまるで森進一か、中村あゆみか、ジャイアンか。
いい感じにハスキーボイスになってとってもセクシーなオレに変身してしまっていたのでありました。
ぬははははは。

しかしさすがは周りは、エキストラとはいえ、ホンモノの関係者の方たち。
撮影の合間に聞こえてくる会話と言えば、「あのCMオーディションの結果が……」とか「あのドラマ出られそう……」とか、そんなぼくの日常では聞けるはずのない会話ばかりなんですね。
ぼくの周りで交わされる会話といえば、オーディションならぬ「オークション」なんです。
ドラマは出るのじゃなくて観るものなんです。
そんな訳で、ちょっと居場所に困ったぼくなのでした。

撮影は、本来であれば22時まで続けられる長丁場の予定だったのです。
ぼくも気合を入れてオッシャー……と出ない声を振り絞ってがんばっていたのですが……あらあら。
主役俳優が飛ぶシーンで、変な落ち方をしてしまい頭部を強打するというアクシデントが発生したのです。
幸いにして命に別状はなかったのですが、動くとかなり痛むということで、撮影継続が不可能に。17時にはアッサリ終わってしまいました。
そんな訳でシトシトと相変わらず寒い天気の下、夕食用のロケ弁と、お足代を頂いて早々に帰ってきたのでした。

助監督と名乗る方から電話がありました

携帯電話なんて普段全く使いませんので、自分が設定した着信音をすっかり忘れていました。
どこかでメロディがチャンチャカ、チャンチャカと鳴りまくっていて「うるさいなあ、もう。さっさと電話取れよ」とあたりをキョロキョロすると、どうも手元の方からチャンチャカ、チャンチャカ。
ひぇぇ、ぼくの携帯だったのね。
慌てて電話に出ると、相手は明日にロケを行う映画の「助監督」と名乗る方。
「明日、撮影開始時間が早くなりましたが、大丈夫でしょうか」ですって。
よっぽど心配だったんでしょうね。
はいはい、大丈夫ですとも。

あと、「他にもどなたかご一緒に来ていただける方っていらっしゃいませんか?」。
うーん、平日だしなあ、ちょっとやっぱり難しいのです。
そもそも、こんな一般シロートに「もっと多くのヒトに集まって欲しいのですが」なんてお願いをしなければいけないほど、よっぽど人の集まりが悪いのでしょうか。
ちょっと心配になってきました。

その他、注意事項としては

「80年代と言う設定ですので、それなりの格好でお願いします」

……は、は、は、80年代?! エイティーズ?! バブリー?!
80年代の格好って、一体何なんでしょう?
必死に考えに考えて、ようやく思いついたのはこのあたり。

  • 竹の子族
  • ロックンローラー
  • スカジャン
  • なめネコ
  • 聖子ちゃんカット
  • テクノカット
  • アラレちゃん眼鏡
  • イソップ
  • 加藤ぉ~、松浦ぁ~

最後の2つは格好じゃないよ。スクールウォーズに金八っつあんだよ。
ラグビーのユニホームに、学ランでも着てたらいいのかなあ……うーむ。
(間違っても、山下真司や武田鉄矢のスーツ姿は違うと思う)
……なんて考えて悩むだけムダなんです。
うわーん、うわーん。
で、結局、明日はどんな格好をしていけばいいのでしょうか?
いっそのこと、「バブル全盛」のイメージで、ダブルのソフトスーツとか?
うわ……ダサ。

帰り道では、雨が結構ザアザアと降っていました。
なんだか道路に反射した赤信号が寂しげに光っていました。
人がいないのに点灯している信号機って……存在価値はあるのでしょうか。
雨の夜の赤信号。世界が真っ赤です

映画のロケに参加することになりました

金曜日に映画のロケがあるということで、エキストラを募集していました。
聞いたことのない会社で、聞いたことのない映画監督の作品でしたが、出演者は割と知っている人たちです。
もうそれだけでミーハーなぼくとしては「非現実的な世界を垣間見るのも面白そうだなぁ……」。
何も考えることなく申し込んでみたのです。

すると、なんとまあ。
その日のうちに「申し込み承りました。集合時間は追って連絡します」なんてメールが届いたではありませんか。
当たっとるんやんけ!
というか、この分だと、申し込んだら誰でもOKみたいですね。
てっきり抽選だと思っていたのです。
でもまあ、有給も溜まっているし、会社の方はOKということにしておこう。
(これナイショ)

で、先ほど。
集合時間をお知らせするメールが届いたのですが、それ見て……ガーン。
当初の予定では、撮影時間は「昼頃から夜10時まで」となっていたのに、急遽スケジュールが変更になったそうで

朝8時30分集合

おい。
会社に行くより早く家を出ないといけないやんけ。
でも、ロケ弁がお昼と夕食と2回も出るらしいから、まあいいや。
(どないやねん)

劇団、本谷有希子「腑抜けども、悲しみの愛をみせろ」(青山円形劇場)

夜、青山は「こどもの城」にお出かけ。
いえいえ、別にお子さまに混じって大のオッサンが一緒になって遊ぼうと言うわけではありません。
というか、その時間はとっくに閉館となっています。
そうではなく、同じフロアにある青山円形劇場で、劇団、本谷有希子の公演「腑抜けども、悲しみの愛をみせろ」を観に行ってきたのです。
劇団、本谷有希子「腑抜けども、悲しみの愛をみせろ」(青山円形劇場)

旗揚げ公演の再演ということでしたが、ぼくにとってはこれが初見の劇団。
どういった劇団なのか、その舞台内容はどのようなものか、と言った情報が一切ないままの状態で観に行ったのです。
が、始まってからすぐにそのストーリーが持つテンションの高さに、グイグイと引き込まれてしまいました。
ストーリーもさることながら、役者陣もすごいのです。
特に"お姉さん"役の方には、演技と判っていながらも、その「話し方」や「視線(目つき)」の凄まじさには、2時間サブイボが立ちまくりです。
終わってみると、ちょっと涙がこぼれそうになっていた自分にビックリですよ。
これはメチャクチャいいですよ、マジでマジで。
間違いなく、本年ナンバーワンの舞台公演であると言ってもいいでしょう。

ストーリーは、全面的に救いようのない暗さです。
徹底的に「これでもか」「これでもか」「これでもか」と、登場人物たちによって繰り出される悪意、悪意、悪意の数々。
もう若竹七海の小説でもかくやと思えるほど、ただひたすらに悪意が悪意を呼ぶ展開には、吐き気さえも覚えてしまいます。
しかし、さりげなくそこかしこに張られていたのが伏線の数々。

やがて、その張り巡らされていた伏線が、ラストのカタストロフィに向かって、ひとつずつキッチリと収束していくあたりはまさにミステリ的手法。
途中までは、まったく先が読めない展開であったのですが、このラストにおけるカタストロフィと、そこに至るまでの伏線の張り方にはまさに「お見事」としか言いようがありません。

ただしひとつ残念だったのは、ストーリー展開が登場人物である「家族内だけ」であったこと。
これが例えば、田舎のムラ独特の「閉塞された空間」「限られた人間関係」「守られなければならないオキテ」といった因習を押し出していれば、なぜお姉さんが妹に対して徹底的に悪意を持つようになったのか、またお兄さんが、妹となる彼女の言いなりにならざるを得なかったのか、その狂気的な理由も明らかになったと思うのです。
またそのムラの因習を押し出すことで、「なぜムラから逃れようとしていたのか」「(希望が打ち砕かれたときに)なぜ人格が崩壊するほど絶望してしまったのか」といった、あのラストの狂おしさももっと深くなったと思うのですね。

とはいうものの、こうしたチャチャは些細なものに思えるほど、今回のステージは「台本」「演出」「役者」ともに非常に完成されたものでありました。
劇団、本谷有希子。
今後も目を離すことができません。

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